「青梅の森」
(久保田)
7月22日 調査区の植生調査結果
西多摩自然フォーラム活動地に、作業開始前に設置して植生調査を行った調査区の調査。昨年7月に作業前の調査を行っているので、それからちょうど1年。概要は前号ニュースで報告したが、調査結果がまとまったので、前号で報告できなかった部分について報告する。
各調査区の草本層の植物種数の1年前との変化は以下のとおりであった。( )内は1年前との環境変化。
A調査区(北面、コナラ高木層残存、林床のヒサカキ・ササ除伐) 34種→39種(+ 5種)
B調査区(南面、コナラ高木層残存、林床のヒサカキ・ササ除伐) 22種→26種(+ 4種)
C調査区(南面、コナラ林を皆伐) 21種→39種(+18種)
D調査区(南面、コナラ・ヒノキ林を皆伐) 13種→34種(+21種)
@ D調査区の昨年の状態からは、高木層=コナラ、亜高木層=ヒノキ、低木層=ヒサカキからなる林の植生がいかに貧弱であるか読み取れる。
A C及びD調査区の今回の調査結果から、皆伐が種多様性の増大に大きく寄与することが読み取れる。但し、新たな構成種の傾向については前号ニュースで指摘のとおり。なお、母樹を残したヤマザクラの実生は、C調査区で9本、D調査区で6本を確認。
B 高木層を残して低木層を除伐するだけでは、植物種数はそれほど増加しない。このことは、急傾斜地で高木層を残してヒサカキ除伐を行った場合に、低木層・草本層がないことによる土壌流出を危惧する必要が生じる。
8月1日 青梅の森運営協議会準備会発足
ようやく運営協議会発足に向けた準備会がスタートした。西多摩自然フォーラムからは木工部会の山田が委員として参加。久保田は別途専門家会議委員のため、この準備会委員にはなっていない。月1回ペースで準備会が行われ、今年度末までに運営協議会発足が準備される予定。なお、8月20には準備会による青梅の森視察が行われ、西多摩自然フォーラムから4名が参加。
E-3ゾーン第2号地活動計画を青梅市に提出
8月17日に以下の計画書を青梅市に提出した。このエリアは現在活動中の場所から東へ100m程の地点。市策定の「青梅の森事業計画」では、Eゾーン(里山ふれあい活用ゾーン)に位置付けられ、このうちE-3ゾーンとして、「現存する広葉樹林は、里山林の復活、多様な植生の回復及び自然の遷移に委ねる保全の各取組により適正に保全していく」、「人工林は、伐採等の管理を行い保全していく」、「ボランティア等との協働による管理を行う区域とする」とされている。
「青梅の森」におけるE-3第2号地保全活動計画書
2012(平成24)年8月16日
西多摩自然フォーラム
代表 久保田 繁男
(連絡先)青梅市日向和田2-310-3
TEL/FAX 0428-22-3874
1.活動場所 青梅市策定の「青梅の森事業計画書」に示されたゾーニングのうち、E-3ゾーンの一角で、下図に示すとおり。面積0.07ha。
図
2.活動期間 2012(平成24)年9月〜2014(平成26)年3月
3.現況 コナラを高木層とする落葉広葉樹林で、亜高木層はリョウブ、アオハダ、エゴノキが多い。林床はヒサカキ、アズマネザサが密生している。
現況の外観は下の写真のとおり。
計画地東端から西方向の外観 ハイキングコース南側の外観
4.活動計画
(1)目標
皆伐を行い、萌芽更新および天然下種更新による里山林の再生を図る。但し、以下は伐採せずに残す
@ 天然下種更新用の母樹および伐採木搬出の際の支柱としてのコナラ高木
A ハイキングコースから花が見える樹高のリョウブ、エゴノキ
B 林床のアセビ、ヤマツツジ
C 毎木調査をふまえて、残すことが適当と判断した木本・草本
(2)第1段階の活動計画
@モニタリング調査区の設置と植生調査
保全活動計画地内にモニタリング調査区1箇所(10m×10m)を設置し、植生調査を行う。
Aヒサカキ・アズマネザサに限定した除伐
活動計画地内のヒサカキ・アズマネザサに限定した除伐を行う。
(3)第2段階の活動計画
@毎木調査の実施
上記のA作業が完了したエリアについて、毎木調査を行う。この結果をふまえて伐採する木、残す木の選定を行う。
A伐採作業
上記をふまえて、(1)@~Cを除き伐採する。
(4)第3段階の活動計画
@モニタリング調査区の植生調査
2013(平成25)年夏季に調査区のモニタリング調査を実施する。
A管理計画の策定
伐採跡地に生えてきた実生の木・草について、残す種と除去する種を区分したうえで、その後の下草刈等の管理計画を作成する。
5.留意事項
貴重な動植物等の保全に配慮するとともに、本計画について青梅市から指摘があった事項について遵守する。
E-3ゾーン第2号地における活動開始
上記の計画書について市の許可が得られたので、早速9月から活動を開始する。第1号地の活動を継続しながら、併行しての活動となる。とはいえ、すぐに伐採まで進むわけではない。当面は設置した調査区の植生調査とヒサカキ・アズマネザサ限定の除伐。次は毎木調査と伐採計画。順調に行けば2013年秋から伐採に入れるというところか。今年度の伐採は第1号地の択伐予定地で継続の予定。第1号地のヒサカキ・アズマネザサ限定の除伐も、まだAエリアは終了していない。今年度中に完了させたいところ。
資源利用のシステムづくりの具体化が問われている
青梅市が策定した「青梅の森事業計画」の最大の特徴は、公有林における「資源利用」が盛り込まれていること。木材資源の需給調査も市の委託調査として既に行われている。これまで、西多摩の温泉施設への木質バイオマス供給が考えられてきたが、今一つ進んでいない。とりあえずは、青梅の森で伐採した材を利用した薪・炭・キノコの生産と流通のしくみを具体化するのが課題。薪は市内のバーベキュー施設で従来の供給者と競合せずに有料で引き取ってもらえるか、薪ストーブ利用者への供給システムが作れるか。いずれにせよ、エネルギー源の原子力・化石燃料から木質バイオマスへの転換という社会的背景が必要。但し、太陽光・風力・水力もあるがここでは除外。化石燃料が木質バイオマスであるかも考慮外。木質バイオマスの需要拡大と連動することが必要だろう。
次は、収益を管理費に回すしくみの具体化。これができると資源利用と管理が回転する。ここに高知県の「土佐の森救援隊」がやっている「モリ券」のような仕組みが入ると、地域経済への貢献も組み込まれる。そこまで行ってようやく里山の資源利用を通じて、「青梅の森」と市民との生活に密着した関係性が形成され、里山の利用と管理のシステムの構築が可能になると思われる。今年から来年に向けての最大の課題。